夏 色 の 風





「なんで気付いたの?

あたしが亮佑を好き、って」


分かっていたけど、本人に言われると

結構ダメージがでかい。


「あんな見え見えな態度じゃ

普通は気付く!亮佑は特殊だな」


「だって亮佑気付かないんだもん。

少しずつやり方が大胆になってくのは

仕方ないって。亮佑は特殊だから」


お互い笑い合う。




そうだよなぁ。なんであんなに

分かりやすい"好き好きアピール"に

気付かないかなぁ…。

どんだけ早苗に心奪われてるんだよ。

『恋は盲目さ…(キラン)』とか

言い出さないだろうな?!




それから、円香渾身の告白シーンを

早苗と2人で目撃したことを

正直に話した。


怒られるかと思ったけど、

円香は笑った。




「直之、ありがとう。

そして、ごめんなさい。

亮佑を理由にはしない。

あたしも、あなたと同じで

ケジメをつけたかったの。

ちゃんとケジメついたから、

今は清々しい気分だよ。

だけど、次の恋にシフトするには

まだ少し時間が欲しいの。

それに直之には"前科"があるから、

どこまで信用していいか分かんない♪」




とびきりの笑顔で締め括り、

『げっ』て顔した俺を見て満足そうだ。




「直之が嫌いなわけじゃない。

同じ日に告白してフラれた仲間だもん、

むしろ大切だよ」




どんな"仲間"だよ…

しかもっ、俺の告白相手は円香だし!

なんか違くないか、それっ!!




だけど、"大切"と言われただけで

舞い上がってる俺の心臓どうしよう!


「仲間ねぇ。なんか複雑だわ」


「あはは!確かに!」


自分で言ったくせに…。




俺たちはどちらからともなく、

キスをした。

最後のキス。

『友達』であることを確認するキス。

『仲間』であることを認めるキス。




悲しいキスだけど、

何故か胸が暖まった。