夏 色 の 風





「円香、真面目な話しだから」


「…分かってる。でも…」




円香の口から言わせたくなかった。

だから、円香が言おうとした続きを

そっと唇を重ねて黙らせる。




びっくりしたようだが、

円香は素直に受け入れた。


ゆっくり離すとき、円香の潤んだ瞳が

なんだか余計に虚しく思える。




「…ゴメン。でも、俺から言いたくて。

俺、円香が好きだ」


「直之……」


「お前が言いたいことは分かるし、

亮佑を好きだっていうのも分かってる。

これは俺のケジメなんだ」




少し早口になってしまったが、

自分の気持ちをはっきり言ったせいか

俺の心は少し晴れて、

緊張でモヤモヤしていた頭もスッキリした。




「突然でごめんな。時間なくてさ。

迷惑って思われても、俺は円香が好きだ。

それはこれからも変わらない」




ニカッて笑うと、

円香が悲しそうに微笑む。