ぽん、と俺の肩を叩いて

茶髪はニカッと笑った。


「殴って悪かったよ。

花火大会も散々にしちまって」


「いえ、とんでもない!

吹っかけたのはあいつですから」




早苗の口から放出された爆弾は

花火に混じって爆発し、

この、"意外といい人たち"を

怒らせる羽目になった。

逆に申し訳ないです、はい!




「まぁ、亮佑。

お前こっちの奴じゃねーだろ。

もしこっちで困ったことがあったら

いつでも頼って来いよな!!」




金髪1が親指を立てて笑った。

なんなんだこの展開…

ついていけん…




『はぁ』とか『まぁ』とか

適当に相槌をしてかわすと、

金髪1がこっそり俺に耳打ちする。




「同じ、ドM仲間だろ!

なっ、亮佑!」




こいつドMなのか…

またしてもどうでもいい情報!




「いいか、亮佑。

お前があの女にマジで惚れてんなら

ちゃんと守ってやれよ?

人生の先輩からの、

有り難いアドバイスだ!」




じゃあな、と手を振りながら

2人は爽やかに去って行った。

街灯の近くで、金髪2も合流し

「飲み行こうぜー!」なんて

会話をしている。




呆気にとられて、

しばらくその背中を見送り

完全に見えなくなってから

早苗に電話で道案内をしてもらいながら

なんとかばあちゃんの家にたどり着いた。




…散々な花火大会だったな…。

だけど、意外といい人たちで良かった。




去り際に2人が言っていた、

『ちゃんと守ってやれよ』

という言葉が、頭の中で

繰り返し流れる。




早苗は俺が守らなくても

生きていけそうな気がするけど…。




ばあちゃん家の門の前で

私服に着替え済みの早苗が手を振って

俺の帰りを待っていてくれた。




暖かい気持ちと、何故か沸き起こる

不安な気持ちを胸にしまって

俺は早苗のもとへ走った。