夏 色 の 風





「俺たちはこっちじゃなくて

あのお高くとまった女を

追っかけてたんだろーが」


「あ゙!そうだった!」




茶髪は明らかに『ガーン』って顔をする。

そのとき、金髪1の携帯が鳴った。




『ご主人さまぁ、お電話でしゅ〜♪』




………そういう趣味だったんですか。




俺がドン引きしているのを

恥ずかしそうに横目で見てから

金髪1は電話に出た。

どうやら金髪2かららしく、

『女を見失った!』と

俺にも聞こえる大音量で叫んでいる。




それから少し会話をして電話を切ると、

俺を乱暴に立ち上がらせた。




「なぁ、お前なんて名前?」


「は…?ぁ、えっと…壱逗 亮佑と申します」


「亮佑かぁ。俺の弟、亮平ってんだ」




そんなのどうでもいい!

俺を殺すのか?!早苗に逃げられたから?

俺で腹いせかっ?!




「大丈夫だって。さっきは殴ってごめん。

でも、元々はお前らが悪いんだからな。

喧嘩売っといて逃げやがって」


「…す、すいません」




直立不動の俺が可笑しいのか、

2人はケタケタ笑った。




なんだ…笑うと普通なんじゃん。

少しだけ恐怖感が薄れる。