「どう?自分の鈍感ぶりが分かった?」
「…はい、すみませんでした…。」
勝ち誇った円香の横顔に
少し腹が立つ。
「そんな訳なのよ。
多分亮佑なら気付かないと
思ってたけど。ここまでとはね」
「言い返せません…」
あはは、と笑われる。
実はこれが人生で初めて
告白された…と言おうとしたが
やっぱり言わないで飲み込む。
「安心して!
なんか告白したらスッキリした!
ナエちゃんしか見えてない男を
追い掛けるのは虚し過ぎるもん」
それに、と円香は続ける。
「多分、亮佑のファーストキス
頂いちゃったし。それで我慢するから♪」
そうだ…そうだった!
さっきのが俺の人生初の
"キス"だったんだよ…!!!
「円香、よくもぉぉ」
「怒らない、怒らない!
あたしも勢いだったしさ、
ごめんって謝ったでしょ〜!」
立ち上がって逃げる円香を、
俺も追い掛けた。
初めての告白(される方)に
初めてのキス…。
思い出すと恥ずかし過ぎて、
とにかく円香を追い掛ける。
円香は意外と足が早い。
途中で直之と早苗も帰ってきて
直之はよく分からないまま
円香を楽しそうに追い掛けていた。
早苗は両手いっぱいの食べ物を抱えて
「もうっ!!やめなさいよー!」
って叫んでいた。
後でこっそり円香が
「応援するからね♪」と
耳打ちしてくれた。
円香と出会えてよかった。
そう思って見上げた空に、
大きく花火が咲いた。