「俺こそごめん、
円香の気持ちも知らないで…」
「そんな、謝らないでよ。
多分気付いてないだろうなぁ
って思ってたし」
うん、全然気づかなかった…。
なんで俺に懐く?!くらいにしか
思ってなかった…。
これって鈍感ってやつなんだろうか。
「ちなみに……
亮佑が誰を想ってるかも
当てられる自信があるよ」
「はぁ?!
べ、別にそんな奴いないし…」
「あはは、今更強がっても無駄無駄〜
好きな人の好きな人くらい、
分かるよ。当たり前でしょ」
むぅ、と唸ってみる。
円香は顔を近付けて
耳を貸せ、とジェスチャーする。
恐る恐る顔を近付けると、
聞き取れるかどうか、という小声で言った。
「岩淵 早苗、でしょう?」
瞬間、顔から火が出るんじゃないかと
思うほど、俺の顔は真っ赤になった。
円香はニヤリと笑った。
「亮佑っていざってときは
嘘がつけないタイプなのね〜。
まぁ、そんなところも好きだけど」
もう、円香は泣いていなかった。
赤くなった鼻と、頬には涙の跡が
くっきりと残っていたけど、
円香はいつものように、笑っていた。

