夏 色 の 風





多分、時間にしたら

3秒もしてないと思う。




だけど、その3秒足らずの時間が

俺には永遠に思えたんだ。




「ご、ごめんなさいっ」


真っ赤な顔をして、

目に涙を浮かべる円香。

俺はこういうとき、

どう対応したらいいか分からなくて

オロオロしていた。


「ごめんなさい…

こんなやり方、卑怯だと思ったけど

あたしが好きなのは――亮佑なの!!」




ぁあ、俺…やっちまったな。




咄嗟にそう思った。

『実は円香も直之のことが…?!』

と、一人で盛り上がってしまった。

円香の気持ちも考えないで

アホなこと言ってしまった。




俺ってどうしてこう、

人の気持ちってやつが分からないんだろう。

分かっていたなら、もっと

やり方はあったはず。

目の前にいる円香が、真っ赤顔して

涙を流す、なんてことには

ならなかったかもしれないのに。




「ごめんなさい…」

円香は小さく、何度も呟いて

くりくりとした大きな瞳から

涙を流し続けた。