「平助、こっち」





パシリと俺の手を強引に掴むと、桜はいきなり走り出した。



何も変わっていないその姿に落ち着くのだが、何かが少し違うような気がした。






ああ、そうか。

血が、ついているんだ。




俺より逞しく見える少し小さな背中に背負われた浅葱色に大量の血が飛び散っているのが目に入った。




それは人を斬った証拠。







あの頃から全く変わっていないわけじゃないのだ、と実感した。



あの頃の桜は守ってやらなきゃ壊れてしまうような気がした。


あの頃の桜は絶対に人などを斬れるようじゃなかった――…。








俺だけが逃げていいのか、と心のどこかで思いながらも、



あの桜が人を斬って、左之さんと新八っつあん命を懸けて開く活路に、






どこか心が温かくなるのを感じた。