「総司、何を急いている?」 一君は知らない。 病魔が僕を蝕んでいることを、 それが死病であることも。 「なんにも。」 一君の問いに僕はそっけなくそう答えた。 そう、何も急いではいない。 ただ、強くなりたいと思っているだけ。 僕は木刀の矛先を彼に向けた。 「来なよ、一君。」 君にはわからないだろう。 僕のこの思いが。 わかるはずもないだろう。 目に見える自分自身の衰えへの恐怖が。 一君は一瞬ためらいの素振りを見せたが、壁に掛けられていた木刀を手にとった。