私は声すらもかけないつもりだった。 たった一言でも言葉を交えてしまっても この覚悟が揺らぎかねないからだ。 だけど… 「私を…1人にしないでよっ…っ」 愛する人がしゃくりあげながら泣いているのに、 私に触れようと格子の間から精一杯に手を伸ばしているのに、 何もせずにただ目に焼き付ける なんてことはできなかった。 「明里。」 短く彼女の名を呼ぶと、泣き声がピタリと止んだ。