通された部屋は、すべてのものが黒で統一されていた。
「ここは、ほとんど寝に来てるような部屋だから」
「……………」
「ゆっくりしててね」
どうやって、ゆっくりしろと。
黒沢幸子、人生最大のピンチです。
「あの、なんであたし今日ここに…」
「ん?なんとなく?」
「なんとなくって…」
そんな理由かよ……。
「ねぇ、幸子ちゃんは好きになるのに理由がいる人?」
「理由…ですか…」
「そう、理由」
「…ないと思います」
「ふーん」
えっ…?
油断した、って思った時にはすでに遅い。
「えっえっ!?」
「ちょっと、黙ってて」
あ、あたし、抱きしめられてます。



