「逃げるな、」
ーー逃げられるわけ、ないじゃない。
そっと近づいてくる顔に、何をされるのかわかっていながらも、拒めなかった。
この行為が、雪兄や、狂乱のみんなを裏切っているっていたのに。
そして、みんな、許してくれるって、みんなのあたしに対する甘さをわかってたのに。
だけど、凪さんを跳ね返すことはできなかった。
触れた皮膚と皮膚ーー唇と唇が、何度も重なり合う。
ソフトだった口づけも、次第に激しく。
そして、啄ばむように。
苦しくて息継ぎをしようと口を少し開けたら、凪さんの舌があたしの口内へと入ってくる。
舌を逃がしても、追いかけ回してくる凪さんの舌。



