「幸子、」
「っ…」
「幸子っ、」
「やっ…」
「幸子!」
「やめてっ…」
「いいからこっちを向け!」
建物の壁に押し付けられ、両腕は凪さんの両腕に拘束される。
マジマジと見つめる凪さんの瞳は、どこか儚しげ。
「俺から逃げるな、」
「っ……」
「頼むから、逃げないでくれ、」
凪さんが感情を剥き出しにするなんて、珍しい。
「会いたかった……」
そう言って、儚しげに微笑む凪さんは、拘束していた手を離し、あたしの頬へと持ってくる。
ああ、なんでだろう。
ドキドキする。
忘れなきゃと思えば思うほど、凪さんへの想いは膨らんで行く。
ダメなのに、あたしはダメなのに。



