「この街で、長い間ずっと過ごしてたんだ。俺から逃げられると思うな、幸子」
「な、ぎ…さん……」
スーツをきて、いかにもって感じの強面な男達を従えて、いつみてもかっこいい、凪さん。
「幸子と二人にさせて」
「しかし若、先代の方々が…」
「話が長引いてて少し遅れてくるって言って。たぶんもう飲み始めてると思うから」
「わ、わかりやした…」
そう言って、男たちはこの場を離れていく。
あたしが駆け抜けた小道から続く、よっぽどがない限りは通らない裏路地。
そこに凪さんと二人きり。
ああ、どうしてこうなっちゃうんだろう。
繁華街の大通り駆け抜けて、外れにある狂乱の溜まり場まで逃げればよかったのに。



