「寿々さんが暴れださないよう、見ててください」
あたしはキャップを深く被り直して、前へ進む。
「ねぇ、お兄さん達、邪魔だからどけてくれない?」
「ああ?」
「なんだてめぇ?」
「通行の邪魔は、やめてよね」
そう言ったら、男たちはあたしへと標的を変えた。
「残念だけど……」
あたしに勝てるなんて、思わないでよね。
「さっちゃん…」
「さすが、雪矢坊が教えただけある。隙がない」
「でも、」
ーーーさっちゃんには、この世界は残酷すぎる
そんなことを寿々さんがつぶやいていたとも知らず。
知らず知らずのうちに、あたしはこの世界に染まりつつあったのかもしれない。



