そんな坂口さんを政宗くんはスルーして。
「ハルカ。ボクが政宗だってわかるの?」
「ほえ?勿論わかるよ」
「ハルカすごい!」
政宗くんはさらにギュッと私に抱きついてきて。
「朝はマムだってボクたちのこと間違うんだよ!ハルカはスゴいね!」
「ほえ?何で間違うの?政宗くんと信長くん、全然違うじゃない」
「みんな同じだって言うよ、でもハルカにはわかるんだね?」
同じ?確かに顔はそっくりだけれども、よく見れば微妙に違う所もある。
眉の形とかつむじの位置とか、あと声だって信長くん方がちょっとだけ高いの。
何で間違えるとやろか?
私は同じ種類の犬や猫だってみんな同じには見えない。
他の人には全然わからないらしいんだけど、私には何でわからないのかがわからない。
「俺だって暫く一緒に居ないと、どっちがどっちかわからないよ…政宗、降りなさい」
「えー?やだ!」
政宗くんはプイッとそっぽを向いて、さらにギュッと首に巻きついてきた。
「政宗!」
声を荒立てる坂口さんに私は。
「政宗くん。エディさんと信長くん起こして朝御飯食べようか?」
「うん!」
「政宗…、遙にはやけに素直だな」
「だってボク、ハルカの事、大好きだもん!」
なんて可愛いの政宗くん!
「ふふふ。ありがと。私も政宗くんの事大好きだよ」
「ホントに?」
「うん。たがらお顔洗って、ご飯食べようね?」
「うん!」
私から降りると政宗くんは元気よくリビングを出ていく。
「……俺。五才児に負けてるかも……」
「ほえ?何か言いました?坂口さん」
「いや……、何も…ほらっ!エディ!起きろ!」
坂口さんは手に持ったままのスリッパで、エディさんの頭を叩いた。
坂口さんって、スリッパで人を起こすのが好いとるとやろか?

