「だから、寝惚けてたんだって!」
「………………」
「悪かったよ。な?機嫌直して?修ちゃん」
「………………」
「ありゃ…、完全に拗ねちゃったよ、この子は。遙ちゃ〜ん、助けて〜」
リビングのソファーでコーヒー片手に、朝の情報番組を見ながら田村さんに背を向け、完全無視を決めこんでいる坂口さん。
「坂口さん?どうしてそんなに怒ってるんですか?」
私はおにぎりをお弁当箱に詰めてリビングに戻ると坂口さんに聞いてみた。
すると坂口さんは肩を落としながら大きく息を吐いて。
「別に……、怒ってないよ、低血だから、朝は機嫌が悪いだけ…」
「低血圧……、ですか…」
でも、さっきまではどちらかと言うと機嫌がよかったような?
「そう言えば田村さん?」
「何?遙ちゃん?」
「さっき、りなちゃんって言ってましたよね?あれって…」
「さーって!シャワーでも浴びてくるかな!修二!着替え貸せ!」
すっくと立ち上がると田村さんはリビングからスタスタと出て行ってしまった。
「ハルカー…モーニン…」
寝室から出てきた政宗くんはまだ眠そうな目を擦りながら私に近付いてきて。
「おはよう。政宗くん」
眠そうにふらつく政宗くんを私はよいしょと抱き上げた。
政宗くんは笑うと私の唇に。
ちゅっ。
キスされてしまった。
ちょっとびっくりしちゃったけど、相手はまだ幼い子供。
それにアメリカ人なんだから、キスなんて挨拶みたいなもんか。
「あっ。エディさんも起こさなくちゃ、ね?政宗くん」
ソファーに視線を移すと坂口さんはなぜかスリッパ片手に私達を見ていて。
「政宗……、日本人はマウストゥマウスはやらないんだぞ?」
と、引きつった笑顔を見せる坂口さん。
マウストゥマウスって、なんやろ?

