部屋を出ると遙は散らかってしまったリビングを片付けを始め、俺はソファーに座りテレビのスポーツニュースを見ながら、時折身体をビクッとさせ「フガッ!」と変な寝息をたてるエディに冷たい視線を送った。



この迷惑な義兄が来なければ今頃は……



なんて考えながら、そろそろ寝ようかと、あくびをしながらテレビの画面をオフにした。



「あ。坂口さん」



キッチンに立ち洗い物をしている遙が俺を呼んで。



「ん?…、何?」



あくびを噛み殺しなから返事をすると。



「明日は何時に起きられます?」


「ん−…、7時くらいには起きるよ」


「了解です」


「遙も、もう遅いから、片付けも程々にして早く寝なよ?」


「はい。もう終わりますから」


「じゃ、先に休ませてもらうね?」


「夜中でも酷く痛んで辛くなったら直ぐに呼んで下さいね?」


「うん。わかった。ありがと、おやすみ」


「はい。おやすみなさい。坂口さん」



もっと遙と話していたくて、名残惜しいけど、明日も仕事だし怪我もしてるし、何より今日は一度に色々な事があり過ぎて、正直身体は完全に疲れ果ててしまっていた。



リビングを出て寝室のベッドに横になる。



半分閉じ掛けた瞼を完全に閉じると、その裏に浮かんでくるのは歪んだ眼鏡をかけて笑っている遙。



もうこれはかなりの重症だ。



はっきりと言える。
遙が好きだ。



そう思って開き直ったら、可笑しくもないのに自然と口角が上がってしまう。



俺があんな子供みたいな彼女に惚れてしまうなんて……



その自虐的な考えとは裏腹にその胸の内は、今まで感じた事が無いような、暖かい気持ちに支配されていく。



これが、恋するって事なのかな……



じわじわと込み上げてくる身体の中まで暖かくなるような感覚に見舞われながら、俺の意識は次第に遠退いていった。