「は?帰る?何で?」
「坂口さんの御家族もいらっしゃったし、私が居ても…」
「えぇーーっ?ハルカ帰っちゃうの?」
「一緒に遊ぼうよ!分身の術教えてよ!」
双子に挟まれ遙は困った顔をして、双子の頭に手を置いた。
「政宗くん、信長くん、ごめんね?おねえさんは忍者でもくの一でもないんだよ……」
「うそだー。ハルカはニンジャだよー、あっ。わかった!ニンジャは正体をばらしちゃいけないんだよね!」
「だからくのいちだってば!ハルカ、安心して?ボクたちナイショにするよ!ね?ダディもナイショに出来るよね?」
「勿論さ!ダディは口は堅いんだ!」
たった今まで項垂れていたエディも顔を上げて双子に続くもんだから、うるさい事この上ない。
アメリカ人らしいオーバーリアクションが俺はウザくて仕方ない。
「そうだよ、遙ちゃん、帰る必要なんかないよ」
救急箱を手に英明がリビング戻ってきて、遙が座るソファーの前のフローリングに膝立ちになる。
「でも、田村さん、私…、坂口さんが御家族が居ないって聞いたから、お世話するって来たのに…、聞けばお姉さんも日本にいらっしゃってるみたいだし、私がでしゃばらなくても…」
英明は消毒液を脱脂綿に浸しながら。
「エディは一子さんを連れ戻しに来ただけなんだろ?」
「うん。そうだよ、向こうのビジネスもあるし、見つけ次第帰国しないと…」
「ほら、やっぱり。だから遙ちゃんはこのままここに居てやって?眼鏡外すよ?……わ。遙ちゃん目デカイね?ごめん。ちょっとしみるかも…」
英明は遙の額に脱脂綿をポンポンと軽く押しあてながら消毒を始めた。
「いっ…、すみません、田村さん…」
「どういたしまして。女の子が顔に傷なんか作っちゃダメだよ?可愛い顔が台無し、ははは」

