時々姉がここに子連れで俺の生活を掻き乱しにやって来る。
いい加減結婚してるんだから少しは落ち着けばいいものを、悪魔二人を従えた姉は以前よりもさらにパワーアップしている。
エディはあの姉の何処がよくて結婚したんだろう?
約束忘れたくらいで子供を置いて家出するか?普通。
しかもミュージカル。
そんなものいつでも見に行けるだろ?
「オー……チコ…、一体どこへ行ってしまったんだい…」
エディは力なくそう呟く。
「エディ、一子だって子供じゃないんだ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
落ち込むエディを何とか浮上させようと、俺は出来るだけ優しく笑って見せた。
エディは顔を上げて俺を見ると。
「チコッ!!」
「おわっ?!!」
テーブルを乗り越え、俺に抱きついてきた。
「チコッ!ボクが悪かった!愛してるよっ!」
「いだだだっ!痛いっ!!エディッ!俺は一子じゃないっ!!」
「チコーーッ!!ごめんよー!」
「あだだだだだっ!!」
「さっ、坂口さんっ!」
エディに抱きしめられる俺の間に遙が割って入り、俺からエディを引き剥がす。
「エディさんっ!!坂口さんは怪我してるんですよっ!」
「……あ…、すまない…シュージが…、あまりにもチコにそっくりで……」
再びソファーに座り項垂れるエディ。
俺は肩を擦りながら。
「とにかく、政宗と信長も居るんだし、一子からはその内連絡あるだろ?」
「………うん」
全く、今頃は何処ぞで飲み明かしているか、躍り狂ってるか、麻雀かパチンコでもやっているに違いない姉の事をそんなにまで心配する意味がわからない。
「あの……」
遙が横から遠慮がちに俺を覗き込んできて。
「私……、帰った方が…、いいですよね?」

