last.virgin




「すげぇ……」



田村さんは呆然とその場に立ち尽くし、男を締め上げる私を、瞬きすら忘れてしまったかのように見つめていて。



「田村さんっ!はよ電話っ!」


「ハッ!……ハイッ!!」



田村さんはビクッとして、慌て胸ポケットから携帯を取り出そうとしたけど。



「………携帯…、車の中だ…」


「はあっ?」


「ひっ!すっ、すみませんっ!」



何故か脅えた表情になって私に頭を下げる田村さん。



「おのれくせ者っ!!」


「殿中でござるっ!」



マンションの通路の向こう側から時代錯誤な台詞が聞こえてきて、そこに目をやると、全く同じ顔、同じ服装の可愛らしい五歳くらいの男の子が二人。



「いざ参る!」


「この紋所が目に入らぬか!」



……み…、水戸黄門?



男の子達はこちら目掛けて突進してきて、私は。



「ちょっ!危なかよ!来たらイカンて!」


「やああぁーーっ!」


「覚悟っ!」


「マサ!ノブ!来ちゃダメだ!」



私の下で男がそう叫んだかと思ったら、男の子二人は私目掛けて飛びかかってきて。



反射的に私は立ち上がり、飛びかかってくる男の子達を後ろに跳んで回避。



そのまま後ろに床に手をつき回転し、倒れる男に飛び乗った男の子達を目の前に、両手を床についてしゃがんだ体勢で着地。



男の子達はそんな私と目が合うと。



「ワァーオ!ジャパニーズくのいち!」


「ニンジャ!本物初めて見た!」


「はい………?」



くの一?……忍者?



男の子達は男と同じ綺麗なアクアブルーの瞳を、キラキラと輝かかせながら私に視線を向けていた。



……ん?
同じ瞳の……色?



「エディ!政宗!信長!」



田村さんの後ろからそう叫ぶ坂口さん。