田村さんは親指で坂口さんを指差すと。
「こいつ、仕事以外何も出来ない奴だから、俺からも宜しく頼むね?」
私は正座したままの体制で、両手を膝に乗せてビシッと背筋を伸ばし、ドンッと胸を叩いた。
「はいっ!任せて下さいっ」
田村さんに頼むって言われてしまった。
これは責任重大。
会社の貴重な人材である坂口さんの怪我が治るまで、しっかりとお世辞しなくちゃ。
「ぷ…、それにしても遙ちゃん、その格好、可愛いね?」
「ほえ?…可愛い?ですか?」
「うん。スゲー可愛い。そそる」
「英ちゃんっ」
「あはは。わかってるって、でもよかったじゃん?結果、上手くいったんだし」
「……そうでもないんだけどね」
「は?何?どういう事?」
「明日…、会社で話すよ、俺、風呂入ってくる」
そう言って坂口さんはソファーから立ち上がり、私も坂口さんの入浴のお手伝いをする為に慌てて立ち上がった。
「田村さん、お茶も出さずに申し訳ありません。ちょっと坂口さんとお風呂に行きますね?」
「へ?一緒に、入るの?」
「はい。行きましょう坂口さん」
「だからいいって、一人で入るから」
「いえ、そんな訳にはいきませんから、田村さんからも宜しくと言われた手前。さ、早く」
私が坂口さんの手を引いて急かすと。
「ひ、英ちゃんっ、英ちゃんが手伝ってくれるからっ!ねっ?英ちゃん?」
「何言ってんのお前?遙ちゃんがいいって言ってんだから、一緒に入ればいいじゃん?邪魔者は消えるからさ。じゃあ、遙ちゃん。後よろしくね?」
「はいっ。お任せください!」
「ちょっ…、英ちゃん!」
−−ピンポーン…−
坂口さんを引っ張っりリビングを出ようとしたら、再びインターホンが鳴った。

