last.virgin




リビングに田村さんを通してソファーに落ち着かせると、坂口さんは怪我した経緯を田村さんに簡単に説明していて。



私は田村さんにお茶でもお出ししようかと、キッチンを物色してみたけどお茶の葉すら見当たらない。



コーヒーメーカーと豆はあるんだけど、会社の押せば出てくるコーヒーメーカーと違って、何やら本格的。



結局どうする事も出来ずにリビングに戻り、坂口さんが座るソファーの横のフローリングにちょこんと正座した。



「……なるほどね…大体わかった…」



坂口さんと向かい合わせに座り、黙って聞いていた田村さんが徐に口を開いた。



「んで?明日仕事は?大丈夫なのか?」


「明日はクライアントとの打合せだろ?俺が行かないと…」


「そうだ。お前英語堪能だし、お前が来ないと纏まるモンも纏まらなねぇよ」



クライアントって外国人なんやろか?



「明日は取り合えず行くよ、後は部長に相談して、自宅で出来る仕事はなるべく自宅でやらせてもらう、当分毎日病院しないといけないし……」


「そうしてくれると俺も有り難い、お前が有給とるなんて言い出すんじゃないかと内心ひやひやしたよ」



心底安心したのか、難しい表情から一転して、ハハハと笑う田村さん。



「修二が休んだりするとその皺寄せが全部俺の所に来るんだよ、正直助かるよ、でも、無理はするなよ?」



田村さん、坂口さんの事、修二って呼んでるんだ。
坂口さんも英ちゃんって呼んでたし
ホントに二人は仲がいいんだな。



「で、仕事の件はこれでよしとして……」



田村さんはニッコリと笑うと私の方を見て。



「遙ちゃん」


「ほえ?…は、はひっ!」



田村さんに、今話題の人気俳優みたいに笑いかけられて、緊張してしまった私は変な変事を返してしまった。