坂口さんはクローゼットの中に入り、そこから着替えを出してきて。
「やっぱり、一人で入れるから、大丈夫だよ」
「何言ってるんですか?大丈夫な訳ないじゃないですか、遠慮しないで下さい」
坂口さんの後ろに回り肩から羽織ったジャケットを脱がせ、次に前に回りシャツのボタンに手をかける。
「ちょっ、脱げる!自分で脱げるから!」
「動かないで下さい」
言いながら坂口さんのシャツのボタンを外していると。
−ピンポーン…
インターホンの音がした。
「あっ、誰か来た。こんな時間に誰かな?」
坂口さんはシャツのボタンがはだけたままの格好で、慌てて部屋から出てインターホンは取らずにドアを開けると。
「はい?どちら様?」
「よっ!」
「……英ちゃん」
「お前携帯電源切ってるだろ?今日も慌てて帰ってくし、って……、お前…、それ、どしたの?」
「ああ…、これ?今日はちょっと、色々あって…」
玄関越しのやり取りを部屋のドアからピョコンと頭を出して見てみると。
「あ。田村さん?」
「え?……、遙、ちゃん?」
田村さん、私の事知ってくれてるんだ。
里奈さんとデスクが隣同士だからかな?
田村さんが私を知っていてくれた事が嬉しくて、部屋を出て玄関へと向かうと田村さんは驚いたような表情で。
「……、修二……お前、まだ初心者の娘に、なんつープレイを強いてんだよ……」
「は?何言ってんの?英ちゃん?」
坂口さんは私の方を振り返って。
「あ……、ちち、違うんだ、これは…」
「体操服……、お前にこんな趣味があったとはな…」
「だから違うって!取り合えず説明するから、上がってよ…」

