持ち帰りのお仕事でもしてるのかな?
ドアを少しだけ開けて坂口さんをじっと見つめる。
電気も点けてない薄暗い書斎らしき部屋の奥で、PCのほのかな明かりだけで照らされた坂口さんの横顔がとても綺麗でつい見とれてしまう。
黒髪で少し固めて緩く横に流された前髪は、今朝は綺麗にセットされていたんだけど、時間の経過からなのか、なん筋か額にかかり、坂口さんの伏せた瞼の長いまつ毛まで落ちてきていて、それが凄く色っぽくて。
綺麗に通った鼻筋に、少し薄目の整った唇。
男の人にこんな事言うのはなんだけど、坂口さんってホントに美人さん。
なんて思って坂口さんの横顔をを見つめていると、私の視線に気付いたのか坂口さんはこちらを振り向いた。
私はドアを開けて。
「お仕事ですか?坂口さん」
「うん。今日はあまり仕事が手につかなくて、はは……って、何?その格好?」
「ほえ?何って、坂口さんをお風呂に入れる為のスタイルですけど」
「……その格好で、入るの?」
「これなら濡れても大丈夫ですし、以前私の兄が怪我した時も私がお風呂に入れてあげてたんです。だから馴れたものですよ」
そう。
お兄ちゃんがバイクでコケて腕を骨折した時も、私がお風呂に入れてあげてた、坂口さんはうちのお兄ちゃんと違って身体も細いし、そんなに大変じゃないだろう。
うちのお兄ちゃんときたら熊みたいに身体が大きいから洗ってあげるのが大変だったな。
「…なんだ……、一緒に入るって、そう言う事か……、ははは…」
「いいお湯加減ですよ?着替えは何処ですか?」
「……着替え位は自分でも出せるから」
そう言って坂口さんはスツールを引き立ち上がると、私を通り越して向かいの寝室へ。
その後に私も続く。

