「え?…いいよ、そんな気を使わなくて、ピザか寿司でも頼もうか?」
「とんでもないです。坂口さんの方こそ気を使わないで下さい。さ、早く部屋に行って休んで下さい」
まだ何か言いたげな坂口さんの身体をくるりと回れ右させて、軽く背中を押して早く部屋に行くように促す。
「……わかったよ、その前にシャワー浴びてくる」
キッチンからリビングへと向かいながら坂口さんはそう言って。
「熱があるのに、シャワーは控えた方がよくないですか?」
「いや、今日は色々あったし、汗もかいたし…」
「一人で大丈夫ですか?私がお手伝いしましょうか?」
「へ?」
廊下に出ようとドアに手をかけた坂口さんは私を振り返って。
「一緒に……、入ってくれるの?」
「片手じゃ不自由じゃないですか?」
「不自由!凄い不自由!ははは」
不自由なのに何故か嬉しそうな坂口さん。
一先ず坂口さんを部屋に落ち着かせ、浴槽にお湯を張りながら、うちから持ってきた食材で簡単な下ごしらえをして冷蔵庫にしまい、お米を炊飯器にセットする。
それから部屋へと戻り、坂口さんを入浴させる為に、普段寝間着として愛用している、中学生の頃の[3-C村山]と今だゼッケンが付いたままの体操服に着替えた。
ハーフパンツの裾を足のつけねまでくるくると捲し上げて。
よし。
これで準備完了。
浴槽を覗いてみると、丁度いい湯加減。
坂口さんの寝室をノックして中に入ると、坂口さんはそこには居なくて、何処に行ったんだろうかと、寝室の向かい側の部屋のドアが少し開いていて、そこを覗いてみると、部屋の奥の方のデスクで、スツールに腰かけPCに向かう坂口さん。

