「この部屋……、ホントに私が使ってもいいんですか?」
「うん。好きに使って、クローゼットは空だから、そこに荷物置くといいよ」
部屋の中に入りクローゼットを空ける坂口さんの後に続いて私も部屋に入る。
クローゼットの中は、ひとつの部屋みたいに広々としていて、私は思わずその中に入りキョロキョロと見渡してしまった。
なんか、坂口さんのお世話しに来たのに、かえって私がお世話になるみたい。
こんなに素敵な部屋に寝泊まりさせてもらえるなんて。
頑張って坂口さんのお世話ばせんとね!
「坂口さん、お腹空きませんか?」
「ん?…、そう言えば、減ってる、なんか食べに行く?」
「何言ってるんですか?坂口さん熱があるじゃないですか。私が作ります、キッチンお借りしますね?」
部屋を出てキッチンに入り。
「冷蔵庫開けますね?」
冷蔵庫を開けると、そこにはビール、ワイン、カクテル、冷酒、梅酒。
「……お酒しか入っとらん」
普通卵位は入ってるんじゃないだろうか?
見事にアルコールオンリーの冷蔵庫の扉をゆっくりと閉めた。
「ははは…、料理なんて全然しないから」
いつの間にか私の後ろに立つ坂口さんは、私の横から腕を伸ばし冷蔵庫を開け、缶ビールをひとつ取り出した。
「あれ?片手じゃ無理か、遙、開けてくれる?」
私に缶ビールを差し出す坂口さんを見上げて軽く睨み、それを取り上げ冷蔵庫にしまう。
「怪我して熱があるのに、刺激物はダメですよ?坂口さんは部屋で休んでて下さい」
「え?…、ビール1本位…」
「ダメです」
「………、はい」
「私、うちからお米以外にも色々持ってきてるんです。簡単な物なら作れますから、安静にしてて下さい」

