マンションの駐車場に着くと、遙は迷う事なく俺の駐車スペースに片手ハンドルでバックで駐車。
しかも毎日駐車している俺より早く、スムーズに。
もう情けない通り越して泣きたくなってくる……。
遙は車から降りるとトランクから例の風呂敷を取り出して、よいしょ。と肩に担ぐ
俺はエレベーターの前でドアを開けて待っていると、風呂敷ゆさゆさと上下させながら駆け寄ってきた。
乗り込み7階のボタンを押す。
「……凄い、荷物だね?」
何となく狭いエレベーターの空間が居心地が悪くてそう言うと。
「お米とか色々持って来ましたから、今日実家から届いたんです。うちのお米凄く美味しいんですよ。坂口さんにも食べさせてあげますね?」
ずれた眼鏡の奥から大きな瞳を細めて笑う遙。
その笑顔に思わず手が延びそうになった時にエレベーターが7階に到着し、ピンと音を経てて扉が開いた。
伸ばしかけた掌の横を遙が通り過ぎエレベーターから出てしまって、やり場の無くなったその掌を軽く握る。
焦る必要はないか。
これから暫くは二人きりで生活出来るんだし。
彼女の事を知る度に、今まで感じた事が無いような感情が次から次に溢れ出してくる。
今まで恋愛なんてしたことが無かった俺は、内心それが楽しみでもある。
こんな娘見た事ないし、もっと彼女の事が知りたいと思う。
今日たった一日で今までの俺の価値観は根本的に覆されてしまった。
「坂口さん?どうかしました?」
いつまでもエレベーターから降りない俺を遙はキョトンと見つめ。
「あ。ごめん、ぼんやりしてた…」
「痛くて辛いんですね…、早く部屋に行きましょう?」
遙が手を伸ばし俺の掌を掴む。
やり場の無くなった掌は、この時を待っていたんだとばかりにそれを握りしめた。

