情けなかろうが大人げなかろうが、折角怪我まで負って不本意ながらもモノに出来たチャンスを無駄にしたくはない。
彼女の方からの思いがけない提案に、頭の中では色々な思考を巡らせてしまって、自分が怪我をしていると言う事を忘れてしまいそうになっていた。
折角の彼女の好意に便乗して、この機会に先ずはお互いの事をもっと知り合いたい。
それが恋愛の基本じゃないだろうか?
それをいきなり飛び越えてしまった訳だけど……。
「遙」
エンジンをかけ、サイドブレーキをに下ろして、今にも走り出そうとしている遙の横のウィンドウをコンコンと叩く和久井。
遙は窓を開けると。
「何?」
「お前、ホントにそいつの家に泊まり込む気?」
「うん」
「うんって…それがどう言う事かわかっとるん?」
「看護」
「……そいつ、男やぞ?」
「わかっとるよ?」
「…もし、そいつに変な事…とかされたらどうするんや?」
「……それは無い、て、坂口さんに失礼やろ?和久井君、それに坂口さんって…何だか頼りないと言うか…ほっとけなくて…」
………頼りない?
……お前も体外失礼だぞ……。
「…やっぱ俺が遙の代わりに行く、元はと言えば怪我させたの俺やし…」
……おいおい。
ちょっと待て。
「和久井君、学校があるやろ?バイトも、坂口さんの送迎とか出来んやろ?」
「……う…」
「私は坂口さんと同じ会社やし、家も近いし、仕事のお手伝いだって出来るかも、怪我の元凶は私にあるんやから、和久井君がそこまでする事ないよ、てか、出来んやろ?」
「……うぅ…」
「それに、和久井君は坂口さんときちんと仲直りしたんやし、何も気にせんでよかとよ?ね?坂口さん?」
和久井のお陰で今の現状が作り上げられたと言っても過言ではない。
むしろ感謝してもいい位だ。
「…ああ、もう気にしてないよ、君ももう帰ったら?転けた位で肩が外れる頼りない俺は遙の世話になるから…ははは…」
…………はぁ…

