「レクサス…いい車乗ってますよね?…それに、お顔も整っていらっしゃるし…相当遊んでるだろ?あんた…」
「車は移動手段として必要だからね……顔に対する文句は両親にでも言ってくれ…」
もしこれが漫画のひとコマなら俺達の間にはバチバチと火花が散っているに違いない。
明らかに敵視されているのがひしひしと伝わってくるが、俺だって引き下がる訳にはいかない。
既に宣戦布告してしまったから。
「あんな子猿の何処がいいの?」
「全て…」
「…全てって…あんた、まさかっ?」
和久井は俺の胸ぐらを掴み引き寄せて、鋭い視線で睨み付けてきた。
肩がズキリと痛んで顔を歪めてしまったが構わず続けた
「だったら何なの?学生の君と違って、お互い自立してるし社会人で大人だし、何の支障も無いと思うけど?」
胸ぐらを捕まれて態勢は不利だが、立場を利用して俺は和久井の上位に立つ。
我ながら大人気ない情けない手段だけど、こいつに腕っぷしじゃ敵いそうにない。
そんなこいつに敵う遙って一体……。
「和久井君っ!何しようとっ?!」
遙がアパートのドアから顔を出し、俺達の姿を見てそう叫んだ。
ドアを閉めて階段を駆け足で降りてきて俺達の横に立つ。
自分の身体の何倍も有りそうな、唐草模様の風呂敷包みを肩に担いで前に結んでいて、その姿は正に……。
「…ジャパニーズコソ泥……」
そう呟く俺に。
「ぶは!」
和久井が吹き出した。

