和久井は俺の姿を見るなり明らかに動揺している様子。
まあ、大袈裟に腕を吊るされてる訳だし、仕方ないか。
「遙…もういいから…君も、気にしなくていいよ…大した怪我でもないし」
「……骨折、ですか?」
「はは…骨折だったらそのまま入院だよ、ただの脱臼だから…」
実は診察を受けるまで俺も骨折だと思っていた、服の上からでも腫れているのがわかったし、ズキズキと疼く痛みは尋常じゃ無い位だった。
処置室で若い女の看護師二人に身体を押さえ付けられ、医師に肩を嵌められた時は、27にもなる大の男が大声を出し、涙までもが滲んでしまった。
「……俺、治療費、払います…」
ブルゾンの内ポケットから財布を取り出す和久井。
「いや、そんな事しないでくれ」
「いいえ、払います」
「君はまだ学生だろ?学生から金を取るなんて事、出来ないよ…それに君は悪くない…」
「それとこれとは別です」
キッパリとそう言う和久井。
和久井は遙が襲われてると勘違いていた訳で、そんな誤解をされるような行動を俺が取ってしまっていた事は明らかで……。
恐らくこいつも遙の事を……。
「坂口さんもこう言ってくれとるんやし、和久井君、もう一度きちんと坂口さんに謝って、ね?それで仲直りしよう!」
は?
……仲直り?
そもそも和久井とは友人でも何でもないし。
むしろ敵?みたいな?
無邪気に笑う遙に、俺と和久井は顔を見合わせた。
どうやら和久井も同じ事を考えていたらしい。
この場を抑え、遙を納得させる為にはこいつと仲良くしたくもないのに、仲直りする必要がありそうだ。

