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病院からの帰りの遙の運転は、ベテランタクシー運転手並みにスムーズで、帰りまでもあの頭文字Dばりの運転をされたらどうしようかと思っていた俺は胸を撫で下ろした。



……何なんだ?
あのドライビングテクニックは……。
相当走り込んでる走り屋か、カースタントのような運転だった……。



彼女の何もかもが予想外。



突進してくるバイクに向かって走って行き、さらに大の男を意図も簡単にのしてしまう彼女の逞しすぎる行動が、目に焼き付いて離れない。



今日一日……。



俺は彼女の事を知れば知る程、自分と言う生き物が物凄く情けない男なんだと思い知らされた。



ちっこい彼女に抱えられ、米の有り難さもわからず、走る体力も無く、バイクにも乗れず、彼女から命を救われ、彼女の素晴らしいバンドルさばきに嘔吐して……。



「…………はあ…」



ため息しか出てこない。



「坂口さん?…大丈夫ですか?肩…痛みますか?」


「いや、全然痛くない、大丈夫だ…」



と、強がって見せる。
これ以上醜態をさらす訳にはいかない。



「誰かお世話してくれる人は居ますか?親とかご兄弟とか…」


「いや…両親は海外に住んでるし、姉は居るがその姉もそっちで結婚してる…」



両親はカリフォルニアでスーバーマーケットを数件と、レストランを経営していて。



俺は大学は日本でと決めていたので、卒業してそのまま今の会社に就職した。



海外での両親の事業は姉とその旦那が既にを後を継いでいて、俺は一人日本で気ままに自分のやりたい仕事をやっている訳だ。



と、かいつまんで遙にそれを話すと。



「……カリフォルニアとか…凄いですね……帰国子女だったんですね…さすが坂口さん…」


「いや、帰国子女なんかじゃ無いよ…元々向こうで産まれた訳だし…」


「えっ?坂口さんって、アメリカ人なんですか?」


「…両親共に日本人だ…まあ国籍はアメリカだから…アメリカ人になるのか…はは…」