last.virgin





ははは。



………はぁ…。



全くどうかしてるとしか思えない展開に、思わずため息が漏れてしまった。



手に持った湯飲みのぬるくなったお茶を喉に流し込み、伝票を掴んで立ち上がる。



「……行こうか?」


「あっ、坂口さんっ、これっ」



遙はテーブルに置きっぱなしになっていた封筒を俺に差し出した。



「……だから、返すって…」


「いいえ!これは社会人として絶対に受け取る訳にはいきません!」



そう言うと遙は俺のポケットに無理矢理封筒を押し込めた。



またここでさっきみたいな押し問答をする訳にも行かない、そろそろ社に戻らないと、昼休みも終わってしまう。



ここはひとまず引き下がるしかないな…



テーブルの隙間を縫ってレジカウンターへ向かうと、そこに居たのは和久井。



遙は和久井の姿を見るなり。



「和久井君、天ぷら凄く美味しかった、ありがとね」


「はは、いいって、あ。それとさ?旨いラーメン屋知っとるんやけど、今度食べに行かん?」


「豚骨ラーメン?」


「うん。バリ中洲の味。辛子高菜もある、俺、週一は通っとるよ」


「マジで?行く行く!」


「食べたばっかしやのに…やっぱお前全然変わっとらん、食い意地が!あはは」


「ラーメンは別腹やもんっ!」


「はは…ホント…全然変わっとらんな…遙は…」


「和久井君は、変わったね?」


「ん?…そか?」


「うん。あか抜けて、カッコよくなった、大学でモテよるとやろ?あはは」


「……そやん事…無かよ…」



二人の会話に苛立ちがピークに達してしまった俺は、和久井とカウンター越しに向かい合わせる遙の前に立ち、バン、と伝票をカウンターの上に叩き付けた。



「…早く、会計してくれない?」


「あっ、すみません。会計はいいですよ?俺の奢りです」



何処までも爽やかな笑顔で和久井は俺にそう言った。