「ちょっ、和久井君っ!ぐしゃぐしゃなるやんっ!」
「あはは、久しぶり、元気やった?てか、何でこんな所におるんや?」
和久井は遙の頭から手を離すと、テーブルに肘をついてその場にしゃがみこんだ。
「私、こっちに就職したんだよ、和久井君の方こそ何で?今何しようと?」
「俺はこっちの大学に進学しとったんよ?今三年、知らんかった?」
「全然知らんかったぁ…そうなんや?」
「うん。お前…相変わらずやなぁ…まだマメ粒でブイブイ走り回りよるとやろ?」
「マメ粒て…マメタンやっ!」
「あはは、子猿が怒った!」
方言で楽しげに話す二人に、完璧にアウェイになってしまった俺。
「…、てことはさ?こっち来てまだ日が浅い訳だ?」
「うん。一ヶ月ちょっと…まだ都会には慣れんな…物価も高いし…」
「あはは。俺も最初はそうやった、あ。じゃあさ?俺が色々案内してやろうか?激安スーパーや古着屋やら、色んな店知っとるよ?」
「え?マジで?」
「うん。遙、携帯変わっとるやろ?新しいの教えて?」
「うん!」
嬉しそうに大きく返事をしてポケットから携帯を取り出し、和久井と赤通する遙に何故か無償に腹がたってしまった。
「……あのさ?昼休み、終わっちゃうんだけど…」
俺がそう言うと和久井は慌てて立ち上がり。
「あっ、すみません、えーと…」
和久井はチラリと遙を見て。
「同じ会社の坂口さん、坂口さん?話し込んじゃってすみませんでした…つい、懐かしくて、彼は高校時代の同級生で、和久井聡君です」
「………どうも」
俺の無愛想な返事も気にする事なく、和久井はニッコリと爽やかに笑って。
「和久井です、こいつの会社の先輩だったんですか…遙の事、宜しくお願いしますね?」
そう言って、再び和久井は遙の頭をかき回す。

