「何でも好きな物注文して?」
「はい」
遙を連れて会社近くの和定食の店へとやって来た。
昼時のランチタイムの時間と言う事もあり、座れるかどうかと心配だったけど、丁度テーブルが空いたみたいで、すんなりとテーブルに着く事が出来た。
「……あの」
遙が開いたメニューの上から、歪んだ眼鏡で俺の方を見て。
「ん?何?」
「ここ…高くないですか?日替わりランチが1500円って…」
「は?…そうかな?別に普通だろ?それよりその眼鏡…かなり歪んでるね?フレーム、曲がってるんじゃない?」
「…これは、昨晩坂口さんが…外して投げたから…」
「え?…マジ?」
覚えてない……。
俺はポケットから封筒を出して、正面に座る遙の前に置いた。
「……やっぱり、これは受け取れない、君を…その…無理矢理…眼鏡まで壊してしまって、ホントにすまない…」
「……無理矢理じゃ、なかったです…」
「え?…それって…」
「御注文、お決まりですか?」
無理矢理じゃなかったと言う遙の言葉に、詳しく聞こうとした所で、アルバイトらしき若い男の店員が注文を取りに来た。
「あ、注文ね…遙ちゃん、決まった?」
俺がそう言うと遙はメニューを閉じて店員に向かって。
「日替わりランチで…」
「あれ?……遙?」
「……和久井、君?」
「あはは。やっぱり遙や!スゲー偶然!お前全然変わっとらんやん!」
和久井と呼ばれたその男は遙の頭をガシッと掴んで、グリグリとかき回した。

