一度出てしまった笑いは簡単には収まらず、俺は腹を抱え、肩を揺すって笑いこけてしまった。



ぐうぅ、って、何あれ?
あははは……は…腹が痛い。


何か。


……負けた。


もう色んな意味で彼女に負けてしまった。


こんな女、見たことない。



「…そんなにおかしいですか?」



下から俺を覗き込む彼女の大きな瞳は、昨晩の断片的な記憶の中にも確かにそれはあって、涙に濡れたその瞼に俺は何度も唇を落としていた。



……ような気がする…



………くそ。



何でもっとハッキリ覚えてないんだ、俺は…



まあ。



彼女も忘れると言ってくれてるし、もういいんじゃないか?



しつこくされたら困ると思って、きちんと話して詫びを入れようと思ってたんだけど、どうやらその心配は無さそうだ。



「…あはは、笑ったりしてごめん、お詫びにランチ奢るから」


「え?そんな、いいです!」


「いや、奢る、昨晩の詫びも兼ねて…」


「だからそれは…忘れて下さい…」



…俺だって出来る事なら忘れたい。



けど……。



「……奢らせてくれないと、コレ、返してあげないよ?」



ポケットから眼鏡とピアスを出して遙に見せると。



「あっ!ピアス!よかったぁ…見つかった…」



それを取ろうと遙が手を伸ばしてきて、俺はそれを遙の手の届かない所まで持ち上げて。



「…金、無いんだろ?…俺、今丁度臨時収入が1万円程入ったばかりでリッチなんだ、だから一緒に飯食いに行こうか?…」



こうでもしないと、遙は言うことを聞いてくれそうにない。
何せ強情だから。



−ぐうぅぅぅ〜…



再び豪快な彼女の腹の虫が鳴って。



「…お…奢らされて…頂きます…」



「……ぶはっ!」