会社に着くとまだ誰も出社してなくて、私は胸を撫で下ろした。
坂口さんのデスクは勿論知っている、彼は社内では有名だから。
広報の坂口さんのデスクの引き出しに手紙を入れて、ホッと一息つく。
同じ階にある女子用の休憩室のロッカーに荷物をしまう。六階にも休憩室はあるんだけど、それはランチをとったり、マッサージチェアがあったりと、社員全員が利用している。
特にマッサージチェアがお気に入りの私。
タダで利用出来るのに、あまり使う人が居ないので、ほぼ私専用になってしまっている。
時間も早いのでそれを利用しようとしたけど、こんなに朝早くから使っている事を、誰かに見られたりしたら恥ずかしいのでやっぱりやめとこう…
給湯室で朝ごはん代わりのコーヒーを入れて、自分のデスクに戻り、書類の整理や伝票の整理等をしていると、いつの間にか時間が経ってしまっていたみたいで、ポツポツと出社して来る人達。
「おはよう、遙ちゃん」
ふわりといい香りがして、里奈さんが隣に腰掛けてきた。
「おはようございます」
「今日は早いんだね?」
「……はい、早く目が覚めちゃって…はは」
「あれ?眼鏡歪んでるよ?」
手を伸ばしそれを直してくれる里奈さん。
「これでよし」
ニッコリと微笑む里奈さんにつられて、私もニッコリ。
里奈さん綺麗だなぁ…
いい香りがするし。
ますます憧れちゃう。
「遙ちゃん、コンタクトにしないの?」
「…コンタクトですか?」
「うん、せっかくそんな大きくて可愛い瞳なのに、勿体ないなと思って」
「えっ?可愛いですか?」
「うん。凄く可愛いくて羨ましい…わたしなんか、必死にアイメイクしてもやっとこれだけ…元がよくないから」
「そんな事ないですよ!里奈さん凄く綺麗で、私の方こそ憧れてます。あ。今度メイクの仕方、教えて下さい」
「うん。いいよ、今度うちに泊まりにおいでよ?二人で女子会やろうか?」
「はい!」
私は元気よく返事した。

