キスは初めてじゃない。
高校生の頃に付き合ってるっぽい?和久井聡君という同級生の男の子と何度かしたことはある。
でもそれは唇に触れるだけの軽いもので、こんなに激しいキスは生まれて初めて。
坂口さんは少し顔を離して、私はやっと息が出来ると、思いきり酸素を取り込んだ。
…はーふー、はーふー…
坂口さんは少し怪訝な顔をしたかと思うと。
「……これ…邪魔」
そう言って私の眼鏡を外し、ベッドの下へと投げ捨てて、再び私の唇にさらに深く口付けてきて。
私は次第に頭の中がぼんやりとしてきて、身体から力が抜け落ちてしまいそになった。
坂口さんの手が私のシャツのボタンに手をかけて、片手で器用に外していくのに気付き、慌てて我に返る。
このままじゃヤバい!
頭の中でやっと警報が鳴り出し、私は喋ろうにも口を塞がれているので、坂口さんの手を掴みそれを阻止しようとしたけど、すでにボタンは全て外されてしまっていた。
わあっ!
前!全部はだけてるっ!
凄い早業っ!
なんて、変な感心をしている場合じゃない。
「…んっ…さかぐ…やめっ…」
唇の隙間からなんとか言葉を絞り出す。
すると坂口さんは少しだけ唇を離して。
「……嫌?」
「…いや…」
です。
と言おうとしたけんだけど、私を悲しそうな瞳で見つめる坂口さんの綺麗な顔に、少しだけ胸がときめいてしまった。
でもこれはある意味チャンスかも知れない。
二十歳でいまだ処女なんて、はっきり言って重くないか?
もしこの先素敵な人が現れたとたとして、私が処女のままだったら、ドン引きされないかな?
これは大人の女性になる為には必要な儀式なんじゃないだろうか?
酔っているとは言え、初めての相手が坂口さん……
相手にとって不足なし……
一回だけ犬に噛まれたと思ってここで済ませてしまえば、私は少し大人になれる。
「……じゃないです…」

