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格好よくてスマートでお洒落な坂口さんのイメージが崩れてしまった。
…ただの酔っ払い。
一人で帰れない程酔っぱらうなんて、これじゃうちのお父さんやお兄ちゃんと同じ…
男の人なんてみんな、こんなもんなんやろか?
いい女になって、大人で落ち着いた男性と素敵な恋愛をする。
と言うのも私の夢でもある。
私の理想に最も近かった坂口さんに少し幻滅しつつ、ジャケットのボタンを外していく。
それにしても高そうなジャケットだなぁ…
手触りが違う…
うちのお兄ちゃんが仕事で着てる服なんて、ホームセンターで買ってきた、1980円のツナギなのに。
まあ、実家が農業だから、仕方ないっちゃ、仕方ないとやけどね?
でも、普段来てる物も、何処へ行くにもスエット。
お洒落なんか全く興味なし。
私も人の事は言えないけど…
ただお金が無いだけで…
とにかく、そんな環境から離れて、はれて私はこれから都会的で自立した女性になる為に頑張るの。
こんな酔っ払いに振り回されてる場合じゃない。
早く帰ってアロマでリラックスしつつ、ばあちゃんが送ってくれた、梅干しを摘まみながら、今月号のファッション雑誌を見るんだから。
確かモテかわ愛されメイク特集が載ってた。
お金は無いけど、イメトレは毎日寝る前の日課。
それだけが私の唯一の楽しみ。
今の私に出来る精一杯…
なんて、考えている内に落ち込んできてしまいそうになって、ブンブンと頭を振る。
坂口さんのジャケット脱がさないと。
袖から腕を出そうと、坂口さんの身体を横向きにさせて、ジャケットを引っ張り、なんとか上着を脱がせた。
「……ん〜」
身体を動かされて目が覚めたのか、坂口さんはうっすらと目を開けて、私の顔をぼんやりとした瞳で見ていた。

