千鳥足の坂口さんは、フラフラとあちこちにぶつかりながら、近くのバーキングまでやって来た。
私はそんな坂口さんが心配で後を着いてきてしまったけど、着いてきて正解だった。
そやん酔っとるとに、車の運転なんか出来る訳なかろうもん…
普段はあんなに格好よくて、モテモテの坂口さんの事を考えると、その変貌振りにちょっとだけ、笑ってしまった。
坂口さんはポケットから鍵を取り出し、ピッ、とロックを外して運転席に乗り込もうとしていて、私は笑ってる場合なんかじゃないと、慌ててそれを阻止した。
「ダメです。坂口さん、飲酒で免停になりますよ?タクシーで帰って下さい」
「やだ」
「はあっ?」
今…やだって言いました?この人?
私は呆れてしまって。
「…じゃ、代行呼びましょう」
「やだ」
「はああ?」
何?この人?
ホントにあの坂口さん?
「…坂口さんのお家…何処ですか?」
「……あっち」
東の空を指差す坂口さん。
坂口さんって宇宙人だったんですね?…
何処の惑星ですか?
惑星ベジータ?
それともコリン星?
ケロン星?
M78星雲?
「……ちょっと、失礼します」
私は運転席に乗り込み、ダッシュボードから車検証を取り出して、その中に載っている住所を見た。
以外にもうちの近くの住所で、これなら私にだってたどり着ける。
一旦車を降りて坂口さんを助手席に押し込めて、再び運転席に戻り、坂口さんにシートベルトをかけて、車のエンジンをかけた。
大きな車だけど、実家は農業をやっているので、トラック等の大きい車の(トラクターも)運転はお手のもの。
私はアクセルを践んで坂口さんの車を発進させた。

