「遙ちゃん?」
ぼんやりと物思いにふけっている、と里奈さんが私の顔を覗き込んできて、現実に引き戻される。
「ほえ?…あ。飲み会、ですよね?…う〜ん…」
飲み会なんて新入社員歓迎コンパの時以来で、乾杯の時に生まれて初めてビールを飲んだ私は、あまりの苦さに涙目になってしまった。
大人って何でこやん苦か物、美味しそうに飲めるとやろか?
なんて思ってしまった。
私もその内、腰に手をあてて、他の人達みたいに、ゴクゴクとビールを飲めるようにな日が来るんだろうか…
正直財布の中身がピンチだけど、これも都会的で素敵な女性になるための投資。
仕方なかね…
食費を削って参加しよう、ばあちゃんが送ってくれた素麺食べて、初給料までの数日間はそれで乗りきろう…
「はい。参加させて頂きます」
「そう?よかった♪じゃあ。急いで仕事、終わらせないとね?」
そう言ってふわりと笑う里奈さんは、女の私から見ても、とても可愛らしく、見ているこっちにまでもその笑顔が伝染してしまって、顔の筋肉が緩み、はにゃぁ、ってなってしまう。
私が目指しているのは、まさにこれだ。と思わずにはいられない。
可愛くて、優しくて、面倒見のいい憧れの先輩。
里奈さんの隣のデスクになれて、私はホントによかったと思ってる。
私もいつか里奈さんのような女性になりたいな。

