last.virgin

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「遙ちゃん。今日ね、飲み会があるんだけど、よかったら参加しない?」



隣のデスクの竹内里奈さんが私のデスクに身体を寄せて、小声でそう言ってきた。



「飲み会?…ですか?」


「うん。田村さんと、坂口さんも来るよ?」



田村さんと坂口さん。



まだ若いのにバリバリと仕事をこなし、実力派な田村さんと頭脳派の坂口さんは、社内でも一二を争うイケメンツートップ。



まだ入社したばかりの私でさえ、部署も違うのに入社三日目で、そのフルネームを覚えてしまう程、社内でも若い(年配もね?)女子社員全員の注目の的だった。



二人ともお洒落で、都会的で格好よくて、田舎からこの会社に就職してきた私にとって、二人の姿はただ眩しく、まるで芸能人を遠くから見つめているかのような感覚。



私の隣の里奈さんだって、ファッション雑誌からそのまま抜け出してきたみたいに可愛くて。



私もいつかそんな風になりたいと、密かにお手本にさせてもらっている。



けど。



親の反対を押し切って、一人暮しを始めてしまった私は、ハッキリ言って無一文に違い状態。



卒業したら絶対家を出て、都会に就職して一人暮しを始めてやる!



と、意気込んで来たのはいいんだけど…



その夢の為に学生時代からバイト三昧だった私は、当時からお洒落する余裕なんか無く、ひたすら貯金していた。



その貯金を全てはたき、アパートを借りて、家具家電一色揃えたら貯金はゼロ。



都会的で素敵な女性になりたいと言う私の夢は、マイナスからのスタートで、服どころか化粧品だって買えやしない…



それに物価が高過ぎる!


卵が1パック三百円て…
卵なんてうちは鶏が産んでたからタダだったのに…
野菜も裏の畑から取り放題…


それなのに…家賃が七万て…



いつになったら私の夢、叶うとやろか?…