放課後は、秘密の時間…

どうして会っちゃうんだろう……

よりにもよって、こんなときに。


「先生、昼休みにこんなとこいるなんて珍しいね」

「ちょっと……仕事で」

「仕事?こっちの校舎に美術室ないじゃん」

「その、今日は……そうっ、会議で」

「え、教師って昼休みも会議すんの?実習生でも?」


今あたしにできるのは、とっさについた嘘が気づかれないように、曖昧に頷くだけ。


このままじゃダメ……

どうしよう、話題変えなきゃ……


「それより、市川君こそどうしたの?お昼休みはいつも学食にいるんでしょ?」

「いや。今日は職員室に呼ばれてさ。今、その帰り」

「えっ?」


職員室?

まさか、あたしとのことで呼ばれたわけじゃ――


「今日休んだやつに、このプリント届けてくれって、谷村が。そいつ、俺と家近いから」

「そ、そっか……」


市川君は、少しだけ面倒そうな顔で、プリントをひらひらとさせてみた。

一瞬だけ浮かんだ不安が、ふっと消え去っていく。


そうだよね……


あたし、何焦ってるんだろう?

今はまだ、堤君以外にあたし達のことを知ってる人なんていないはずなのに……


「先生?なんか、顔色悪いよ?」