放課後は、秘密の時間…

はぁぁ、と大きなため息を一つついて、そのあとに彼が呟いた。


「でも、まぁ……」

「市川君?」

「そんなこと、俺には関係ないけど」


え?


聞き返そうとしたときには、もう遅くて――

気づけば、あたしの背中に鈍い痛みが走っていて、すぐ目の前に見えたのは、市川君の喉元だった。


なにが……起こったの……


顔を上げると、市川君が無表情にあたしを見下ろしてる。

その距離は近すぎて、彼の目の横にある小さな泣きボクロさえハッキリ見えるくらいだ。


「い、市川君っ……?」

「何、先生」

「何って……市川君こそ、何してるの?」

「………」


「何」、なんて、あたしが聞きたい言葉だよ?


だって何であたしの両手を、市川君の手が押さえつけてるの?

何であたしの身体は、市川君と壁に挟まれてるの?


混乱する頭の中を必死に整理して考えようとするけれど、今のこの状況がどうしても理解できない。

そんなあたしを見て、市川君はふっと笑った。


「先生、ごめんね?」

「え?」

「俺、先生のこと気に入っちゃったみたい」