「さっきの続き。先生、彼氏いるの?」


ま、またそれっ!?

市川君、あの話、聞こえてたのかなぁ?


そりゃそうだよね。

あんな大声で話してたら、廊下にも筒抜けだったろうし……


でも、真面目そうな市川君まで聞いてくるとは思わなかった。


やっぱり高校生って、そういうことに興味あるんだろうなぁ。

年頃だもんね?


「教えてよ、俺絶対誰にも言わないからさ?」


にこにこしながら聞いてくる市川君は、まるでしっぽを振りながらなついてくる、大型犬みたくて。

……なんかカワイイ。


「ホントに言わない?」

「絶対言わない!」

「それじゃ、市川君にだけだからね」


彼は目をキラキラさせて、あたしの言葉を待ってる。


そんなに聞きたいのかな……?


「彼氏、いるよ」


答えた瞬間、市川君は急につまらなそうな顔をした。


でもそれは、あたしが予想していた反応――

「どういう人?」とか、「付き合って何年?」みたいに質問してくる市川君とは、まるで正反対で。


正直、この空気は予想してなかったかも……