放課後は、秘密の時間…

「まるで、見せつけられてる気分だったよ。それともわざとそうしてた?」

「なに……言ってるの?」


市川君が早口気味に話す言葉は、意味を理解する前にあたしの耳を通り過ぎてく。


「ねぇ市川君っ……」

「とぼけんなよ、今更だろ」

「ホントにわかんな、」

「もう黙れよ」


言葉を言い終わらないうちに、市川君の左手があたしの口を塞いだ。

少しのスキもないように、強く、きつく。


……何で市川君はこんなに怒ってるの?

怒らせるようなことなんか、あたし、してないっ……


市川君は、いつも強引で、無理やりキスとかしてくるけど……


でも、こんなじゃない。

こんな冷たい目で、あたしを見たことなんてない。


――なのに、どうして?


見上げると、市川君はどこか悲しそうな目をしてる。


苦しくて怖くて、泣きたいのはあたしの方なのに……

何で市川君がそんな顔するの?


そんな思いさえも、大きな手に阻まれて伝えることができない。


手を放してほしくて身体をひねると、もっと強い力で押さえつけられた。

暴れた拍子にぶつかった机の上から、軽い音を立てて書類が何枚も落ちていく。


「先生、抵抗しないで」