まぶたを開くと、彼女の残像がすっと消えていく。


今頃、彼女は笑顔でいられてるんだろうか?

一人で涙を我慢して、俯いてないんだろうか?


そこまで考えて、俺はふうっとため息をついた。


こんな心配をするのは、もう俺の役目じゃない。

彼女をこの手から放した瞬間に、すべて終わってしまったんだから。


「……あかり……」


無意識にこぼれ出た名前に、視界が揺れていった。

鼻の奥がツンと痛む感覚に、強く唇をかみ締める。


本当に、好きだった。


――いや。

今でも、好きだ。


だからこそ、あの小さな背中を見送ったんだ。

俺の幸せよりも、彼女の幸せの方が大切だったから。


あかりに笑って欲しかったから。


だけど、本当は――……


「行くなよ……」


無理やりにでも引き止めたかった。


「行くな、行くなっ……」


俺の傍で、笑っていて欲しかったんだ――