「――拓真っ!今日から例の教育実習生、来るってさ」

「ふーん……」


教室に入った途端、朝から興奮気味に話しかけてきたのは、斉藤圭。

俺の小学校からの親友だ。


「なんだよ、その返事。興味ねぇの?」

「ない」


興味なんか、全然ねぇよ。

一ヶ月いるかいないかの教育実習生なんて、正直、俺にはどうでもいい話だし。


「じゃー拓真、賭けはパス?」

「パス。んなことするだけ、時間の無駄だって」


俺はキッパリと言い切った。


今回の賭けは、今日から来るっていう女の教育実習生を、実習期間内に落とせるかっていうヤツだ。

賭ける物は、学食の食券とかジュースとか、いつもそんな程度のものだけど、意外とコレが盛り上がったりする。


「じゃあ、山崎辺りがやんのかなぁ」


ああ、山崎ね。

いいヤツなんだけど、女にはやたらと手が早いんだよなぁ。


まぁ、今回の件に関しては、適任って感じがする。


「いいんじゃね?じゃあ俺は、山崎が落とせない方に、食券一枚ね」



そんな会話をした、数十分後だ。

「実習生は俺が落とす」なんてバカげたことを、俺が口走っていたのは。