「――どこにいるんだろう……」


駅に着いたあたしは、呆然と呟いた。


ここまで戻ってきたものの、市川君がどこにいるのかわかんない。

あれから何時間も経ってるし、まさか駅にいるわけないよね……?


「そうだ、携帯電話っ……」


ポケットの中を探ってみたけど、指に触れるのは布の感触だけ。


そうだ。

使わないと思って、家に置いてきちゃったんだ――!


どうしよう……

こんな休日で、沢山の人が外に出てる中、市川君一人を探すことなんて出来るんだろうか?


もしかしたら、市川君は家に帰ってるかもしれない。


それなら、一度部屋に携帯電話を取りに行って連絡した方がいいかな?

でも、電話しても、出てくれなかったら……


気が付くと、ネガティブな考えばかり浮かんで、あたしは首をぶんぶん振った。


このままここにいたって、どうしようもない。

とにかく、駅を出よう。


人ごみを避けて、歩き出したあたしの手を、突然誰かが掴んだ。


「――あ……」


振り返ると、そこにいたのは――……