放課後は、秘密の時間…

「――何かあったのか?」

「……え?」

「分かるよ。あかりとは長く付き合ってきたし」


あたしを見る大也の目は、ひどく穏やかなものだ。


あんなに傷つけてきたのに……

どうして、そんな優しい言葉をかけてくれるの?


「何にもないよ?」

「そんな赤い目で言う言葉じゃねぇだろ」

「……っ……」

「どうした?」


問いかけてくる大也に、あたしはただ首を振った。

市川君とのことを、大也に話せるわけない。


「――あいつと、何かあったのか?」

「……な、んで……」

「何でだろうな?お前のことだと、すぐ分かっちまうんだよな」


切なそうに笑った大也が、あたしの頭をぽんぽんと撫でた。


市川君と別れた今なら、大也の気持ちが少しだけ分かる。

あたしは、こんな胸の痛みを、きっと何度も大也に味わわせてきたんだろう。


「なんて顔してんだよ、あかり」


優しい笑顔に、胸が苦しくなってくる。


「店出よう。その方が、落ち着いて話出来るだろうし」


あたしの手を引いて、大也が立ち上がった。